私は高宮さんの母親に自宅の場所を聞き、直ぐに行く事にした。
高宮さんの自宅は、最寄り駅より2つ先の地蔵崎という駅で下車すれば良いという事だった。
記憶の無い私の為に、駅まで迎えに来てくれるというので、安心して行く事が出来る。
まだ正午を少し過ぎた頃だし、時間は十分にある。
直ぐにマンションを出て駅に向かって急いでいると、前方に茶髪のいかにも注目を浴びる様な女性の姿が見えた。
あれは由衣だ。
私は小走りで、その後ろ姿を追った。
「ねえ由衣、どこ行くの?」
追い付いた私が声をかけならが肩を叩くと、驚いた由衣が歩道から車道に落ちた。
「な、何するのよ、危ないじゃない!!」
「ごめん、ごめん。
とこか行くの?」
由衣は肩に大きめのショルダーバッグ…いや、スポーツバッグを掛けていた。
「あ…う、うん。バイトにね」
「バイトかあ」
スポーツバッグを持って行くバイトって、一体何だろう?
気にはなったものの、余り詮索したくなかったのでそれ以上は何も聞かなかった。
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