キャンパス内を正門に向けて歩いていると、再びライターに出会った。

「やあ、今から帰るのかい?僕も帰る所だから、近くまで送ってあげるよ」

私は断る理由も無いし、近くまで送ってもらう事にした。


車に乗り坂道を下っていると、ライターが不意に呟いた。

「暗殺者か…」

「え?」

「いや、その台本だよ。来年公開される映画の台本だよね?
確か、何人かを公募で選ぶ様になっていたと思うけど」


映画の台本…
公募で選ぶ…

その言葉に、私の中で何かが繋がりかけた。



「この辺りで良い?」

考え込んでいた私の耳に、突然ライターの言葉が飛び込んできた。

「あ、はい。ありがとうございました」


私は自宅近くの交差点で、ライターの車を降りた。ライターは頭を下げた私に、窓を開けてポツリと言った。

「気を付けなよ」


走り去る車を見詰めながら、私はその言葉に首を傾げた。

気を付けなよ?


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