中に入ると、その内の1人が私の存在に気付いた。
「あ…ヤバ」
そう言って立ち上がると、慌てて私の横をすり抜けて外に出て行った。
一体何が…?
そう思って机の上を見ると、演劇とは全く関係ない事をしている。
そう、どう見ても漫画を書いているのだ。
「チッ、円城かよ!!」
突然背後から声がして、私は思わず振り返った。
そこには、私より少し背が高い程度…つまり身長165センチ程の、小肥りな男性が立っていた。
天然パーマらしき髪は自由気ままに伸び、色白で丸い黒ぶち眼鏡を掛けている様は、まさに漫画に登場する様なオタク系その物だった。
「お前ら引き上げろ」
「はぁい」
状況を考えると、どうやら隣の漫画研究会が、誰もいない演劇サークルの部屋を無断で使用していた様だ。
という事は、演劇サークルの人間は当分ここに来ていないという事になる…
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