外を1人で歩くのは初めてだ。いや、厳密に言えば、記憶がある限りでは…だ。
担当医の説明では、頭部に激しい衝撃を受けた為の一時的な記憶喪失との事だ。自分の事についてだけの記憶が失くなり、その他の社会的な事は全て記憶にある。
この症状の場合、大半は徐々に記憶が戻ってくるものらしい…
大学を中心に開発が進んだだけあり、道は真っ直ぐに伸びている。
しかも今日は雲1つ無い青空で、清々しい空気を吸い込めば全ての記憶が戻りそうだ。
上機嫌で歩いていると、私の隣に国産の白いセダンが止まった。
無視して歩いていると、背後から聞き覚えがある声がした。
「円城さん!!」
振り返ると、車の中からあのライターが手を振っている姿があった。
「西村さん!!
こんな所で、一体何をしているんですか?」
「いや、鈴ヶ丘大学に用事があってね。大学に行くなら、連れて行ってあげるよ」
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