扉を開けると同時に流れ出してきた空気は、私の匂いがした。
間違いなく、ここは私の部屋だ。
「さっき見えたホームセンターに行けば、合鍵を作ってくれる筈だから。
大家さんは2件先の黒い屋根の豪邸だから、鍵は返しておいてね。
それと、当面の生活費として1万円貸しておくね。あとで利息つけて返してよって冗談冗談、ははは」
由衣は私を送り届けると、笑顔でそう言った。
「由衣、ありがとう」
「本当はずっと一緒にいてあげたいけど、バイトがあるしさ。
でもまあ、私はそこの角にある茶色いマンションに住んでるから、歩いて3分だしね。
何かあったら電話してよ」
「分かった」
由衣は玄関先で話をした後、直ぐにバイトに向かった。
私は廊下に出て手を振って見送ると、1ヶ月帰らなかった部屋に入った。
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