その週の土曜日、11時過ぎに病棟に来た由衣は、一通り看護師に挨拶をして私を病院から連れ出した。

外の世界を全く知らない私は、退院というよりは連れ出されたというイメージの方が強い。

「麻弥、あんたのマンションは隣の鈴ヶ丘市にあるから、私が連れて帰ってあげるね。

マンションの鍵も、ほら管理人に言って預かってきてるから大丈夫よ!!」

「うん」



私達は15分余り歩き最寄りの駅に着くと、上りのホームに向かった。

由衣の話によると、私のマンションまでは電車で30分、駅から徒歩で10分程の場所にあるらしい。

私にとっては全く記憶に無い場所だが、行けば何か思い出すかも知れない。


私は電車に揺られながら、大学やサークルの話を由衣から聞いた。

その話は真新しい情報だったが、何か懐かしい様な気がした――


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