それから1時間程その場で話をしているうちに、由衣が友達だという事を自覚した。
会話のペース、記憶を失ってからこれ迄に感じた事が無かった居心地の良さ。
この空間は間違いなく、常に行動を共にしてきた人間ならではのものだ。
「じゃあまた来るからね」
「バイバイ」
言葉は変だが、すっかり打ち解けた私達は、再び会う約束をして別れた。
私は見送りながら、由衣の言った言葉を思い出していた。
「私が面倒みてあげるから、退院したらどう?
ここにいても、治療がある訳じゃないでしょ。外に出た方が、思い出すきっかけがあるんじゃない?」
確かにそうかも知れない。
それに、ワンルームマンションに住んでいるらしい私は、ここにいては家族と連絡がつかないし…
後は担当医が、どういう判断を下すかだ。
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