あの事件が起きて1週間後、病室にあのライターが訪ねてきた。
「傷の具合はどう?」
そう私に声を掛けながら、手にしてきた小さな紙の箱をテレビ台に置いた。
「あ、これ一応御見舞いね。シュークリームが入ってるから…」
「ありがとうございます」
私は起き上がってベッドに腰を掛けると、軽く頭を下げた。
そうだ。
私はこの人がいなければ、あの場で間違いなく死んでいたんだった…
「あ、あの時…助けて頂いて、ありがとうございました」
改めて礼を言うと、ライターは右手で頭を掻きながら照れ臭そうに笑った。
「いや、当然の事をしたまでだから。
仕事用のメモ帳を失くして、それを探しに病院に戻ってきた時に、偶然君が奥の方に歩いていく姿が見えてね…
君に伝えたい事があったし、ロビーで待っていたんだけど、余りに帰りが遅いんで見に行ったんだよ」
「そうだったんですか」
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