リモコンを手に取りテレビのスイッチを入れようとしたが、電源が入らない。
理由が分からず、テレビのつけ方も忘れてしまったのかと思い、近付いて見てみると3時間100円と書かれていた。
確か私の持ち物だという財布の中に、お金が少し入っていたはずだ。
しかし中身はキッチリと7千円…
どこかで両替してこなければ、小銭がない。
しかし、私は勝手に出歩いても良い状態なのだろうか?
確かに肩口は少し痛むが、身体は特に痛くて動かないという部位もない…
カチャ
「調子はどうですか?」
思案している所に、昨日駆け付けた若い医師が病室に入って来た。
私はベッドに腰掛けた状態で、その医師が立っている扉の方を見た。
「特にどうという事はありませんが…」
私の気のない返事にも優しげな作り笑顔を崩す事なく、私の方に近付いて来た。
「まぁ、身体の方は検査の結果も特に問題はないけど…
頭を少し強く打っているみたいだから、余り無理はしない様にね。
あ、それと僕が君の主治医になったから、1日に1回は様子を見に来るからね」
若い医師の胸には、清水と書かれたプレートが着いていた。
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