慌てて目を開けると、金属バットを振り上げた松山さんが立っていた。
目は真っ赤に充血して吊り上がり、口角は薄ら笑いで歪み、髪は天を突くように逆立ち――まさに鬼の様な形相で、私を見下ろしていたのだ。
私は声を上げる事さえ出来ず、台の上から床に転げ落ちた。
甲高い金属音が室内に響き、私がいた場所に金属バットが叩き付けられた。
松山さんは床に倒れている私を睨み付けながら、軽く笑った。
「逃げない方が痛くないわよ。逃げると、余計な箇所が折れるから…」
松山さんは、その青白い顔にかかる髪を左手で掻き上げると、右手のバットを引き摺りながら歩き始めた。
私にはその金属バットが、まるで死神の大鎌に見えた。
私は床を這う様にして出口に向かったが、当然の様に松山さんは出口にたちはだかった。
「今度は逃がさない…」
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