私は不思議に思いながらもベッドから起き上がると、病院から与えられた緑色のスリッパを履いた。
そして、その少し開いた扉に向かって、白い床の上をゆっくりと歩いた…
キィ
扉の留め金がきしむ音と共に、一度扉を引いて顔だけ廊下に出して左右を見渡した。
特に人影もなく、誰かが近くにいる雰囲気もしない…
扉の具合が悪いのか、松山さんが閉めていた様で閉まっていなかったのかは分からないが、何かの加減で開いたのだろう。
今の私には、この程度の判断しか出来ない…
とりあえず今度は自分でしっかりと扉が閉まった事を確認して、再びベッドへと戻った。
「ふぅ…」
ベッドに寝転び、白い天井を見上げる。
さすがにずっと天井を見て過ごす訳にもいかないし、ひょっとしたら何かを思い出すかも知れない…
そう考え、テレビを見ようと、ついさっき携帯電話と並べて置いたリモコンへと手を伸ばした。
「あれ…?」
テレビ台兼食器台に置いたはずの、リモコンが見当たらない。
周囲を見回すと、枕の窓際にリモコンを発見した。
触ってないはずなのに…
少し妙な印象を受けたが、ひょっとしたら無意識に移動させたのかも知れないし…
余り深くは考えなかった。
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