「時間は特に決まってないんだ。
 その教室はばあちゃんが教えてるんだけ
 ど、
 
 
 来るのは生徒というより、ばあちゃんの
 趣味友達って人ばっかで…ほとんどが
 中高年だよ」


教室がある方を向いてほがらかに言う。


「だからいつ行っても自由だけど、そろそ
 ろ行こうかな…
 
 一緒にデザイン考えてくれって頼まれて
 る人がいるんだ」



「約束あるのにひきとめちゃってごめんね
 じゃあ……またっ」


「大丈夫だよ。ドーナツごちそうさま」



内田くんは静かに立ち上がると律義にお礼
を言ってから、公園をあとにした。


相変わらず強い風が公園の木々を揺らして
いる。
髪を押さえつけながら智香は去っていく
内田くんの小柄な後ろ姿を見ていた。





一人になって冷静になる。
何てことをしてしまったんだろう。


内田くんが優しいのは分かった。

優しいけど…でも誰かに話さないとも言い
きれない。



もし、誰かにしゃべってそれがクラスに広が
ったりしたら…


クラスの子…友人達…外山くん…
様々な顔が頭をよぎる。


今さら顔から血の気が引くのを感じた。


やってしまった。
やってしまった。


その思いだけが頭を占め、叫びだしたい
衝動を抑えながら智香は家へと急いだ。