「そうなんだ。自分で手作りしたものを
 使えるのって楽しいね」


「そうだね…手芸部があれば入りたかった
 けど、無いから調理部に入ったんだ。
 料理も好きだし…
 
 中沢さんは、ドーナツが好きなの?」


まゆげをかすかに下げながら、遠慮がちに
聞いてきた。


誰だって、普段清楚で控え目な同級生が
あんなことをしているのを見たら言葉に詰
まるだろう。

出来れば忘れて欲しい…



さっきのは無かったことにしたいけど
そうはいかないか…

私は諦めて正直に口を開く。



「ドーナツは一番好きな食べ物なの。
 
 昔、弟とふざけてドーナツをはめたのを
 思い出したら、懐かしくなっちゃって。
 
 それでさっきは………」


恥ずかしかった私は市川屋のドーナツの袋
へ視線を落とし、うつ向きがちに呟いた。


内田くんは、あぁそうかという顔をして
トンッと軽く膝を叩く。



「分かるよ。
 小さい頃は誰だってそういうことするか
 らね。
 
 僕もよくいたずらして怒られたんだ…
 今思うと些細なことでも、小さい時は
 面白いんだよね」



何て返されるかと身構えたけど、
内田くんは何てことなさそうに言った。