「お父さん・・」


「君のお父さんと私が初めて会ったのは高校2年生の頃でした」


「?」


「私は家が車のメーカー会社だったこともあって工業科で専門知識を学んでいました。・・・元々自分から他人に話しかけていける方でもなかった私は、2年生に進学しても友達が全くいなかったんです」


「・・・」


「そんな私はある日、誤って授業で使う大事な部品をどこかへなくしてしまいました」


「え、」


「その時はとても焦りました。ですがどこを探してもなかったんです。クラスメートはそんな私を横目で見ながらも、特に何もすることはありませんでした」


「ひどい」


「ははは。いや、しかし。私も他人が困っているときに何もしてやらなかった質なので文句の言い様がないです。そんなこんなで、見つかることもなく、結局その授業がやってきました。」


「え・・・」


「授業が始まってすぐ、先生が私に聞きました。「千賀くん部品はどこに?」クラスメートはみんな気まずそうな顔をして下を向いていたときでした。1番後ろの席から大きな声で、「その部品俺が使っちゃったかも!」と声がしたんです」


「?」


「それが、君のお父さん。篠原徹でした。徹は、クラスでも1、2を争う技術力と人気を誇っていました。私と真逆でしたね。今思うとあの時からでしょうか。私はいつも徹を誇らしげに思っていました」


「お父さん・・・」


「その授業は結局私と徹が怒られる授業へと変わりました。先生の説教が終わってから、徹に「どうして嘘ついたの?」って聞いたら徹はニコニコしながら言ったんです。「嘘じゃない、本当に使ったんだ!」って。私は今でもあの時の出来事は徹の嘘だと思っています。ですが、大切なのはそこではなく、濡れ衣をきてまで私を助けてくれたことです。」


「・・・・」


「私はその時から決めたんです。徹が困っていたら私が助けようと。もしかしたら今がその時なのかもしれません。」

「え?」

「苺さん。うちに来ていただけませんか」

「え・・・」

「どうか、私に徹へ恩返しをさせてください」