「はぁ。
でもさ、なんで俺たちにはこいつらが見えるんだろうな。」

雷雨の言った『こいつら』とは死霊、つまりは
ユーレイである。

「さぁね。
気づいたときには見えてたんだ。わかるわけないだろ。」

「だよなー...。」

三人がそのまま、他愛のない話をしながら繁華街を歩いていたときだった。

「ちょっと待って!」

「!?」

誰かが十夜の腕を掴んだ。

「誰だ、てめぇ。」

「......。」

そいつは十夜の問いかけに答えず、じっと彼の顔を見つめていた。

年は十夜達と同じくらい。
肩下まで伸びた、漆黒の髪。
凛とした顔つきは、大人っぽさを感じる。
可愛いというよりは、キレイという印象を受ける女がそこにいた。

「おい、お前は誰だって聞いてんだよ。」

女は十夜の腕を離すと、面白いとでも言いたげに笑った。

「確かに、素質はすごいな。」

「は?」

「あぁ、独り言だから気にしないで。
悪かったね、急に引き止めたりして。」

じゃあ、と。
そう軽く手をふって女は人混みに消えた。