隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話

「桜は僕のせいで、無理をしている」

「無理って?」

「母親の話なんて、ここ何年もしてない。僕に気を使ってる。そして……『桜が元気で笑ってると、お父さんは幸せ』って僕が言ったから、桜はいつも笑顔を見せてる。母親が恋しいのに僕が振り回してる」

苦しそうな顔が見ていて切ない。

「違うよ田辺さん。田辺さんは一生懸命頑張ってる。桜ちゃんがお母さんって呼んだのは、熱のせいもある。ってゆーか……叫んでもらってよかったんだよ。これで桜ちゃんもガス抜きできて、無意識にスッキリしたかもしれない」

彼は驚いた顔をして私を見る。

「深く考えすぎ。桜ちゃんは田辺さんの事が大好きなんだよ。そこを一番忘れちゃいけない」

上手く言えないけど
絶対そうだと思うから。

田辺さんは頑張ってるもん。

「どうして泣くの?」
そっと田辺さんの指が私の目じりを押さえる。

泣く?

あ……泣いてた私。

夜中のテンションって涙が出やすいのかも。

恥ずかしくなり
涙を隠そうと思っていたら

急に強い力で引き寄せられ

その胸に入れられた。

「あ……」
思いのほかに広い胸にためらってたら


静かに

唇を寄せて

キスされた。