「気合入れすぎですよ」
クスクスと笑って、今度は手を伸ばし、私の頭を乱暴に撫でた。

「気合入れるのが好きなの」
手を振り払うと
そのまま移動して
彼は私の手を握り、テーブルの上にのせる。

こんな場所で
桜ちゃんの目の前で恥ずかしい。

顔を赤くしつつも
優しく温かい手から逃げられなくなる私。

「郁美さん。たまに突っ走るから心配」

「誰かさんがマイペース過ぎるんだもん」

「マイペースでちょうどいい」

「程度の問題でしょ」

手を重ねながら言い合うと

「おとうさんもいくちゃんママも、ケンカはいけません」

ドヤ顔でアイスを頬張る
新一年生に怒られた。

「はい」
「ごめんなさい」

ふたりで謝り
重ねた手を改めて繋ぎ
家族三人で笑顔になる。

新一年生のお嬢さん。
新しい世界が始まるよ。
いつも見守っているからね。

頑張れ桜ちゃん。

そして
頑張れ
新米ママの私。

紀之さんの優しい笑顔に包まれて、春の香りを待つ私。


    【完】