隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話


固まってしまった。

悪い意味で身動き取れない。

私は彼に抱かれ
彼は私を抱きながら

フリーズ。
フリーズ……凍る
そのままフリーズドライでレーズンになりたい。

桜ちゃんはあどけない顔で、階段をひとつずつ降りてきて、私達の前にちょこんと座る。

なっ何とか言ってよ!
ごまかし上手の紀之さん!

「しらゆきひめは、おうじさまにちゅーされて、めがさめるんだよ」

桜ちゃんは真剣だ。

「オーロラひめも、おうじさまにちゅーされるんだよ」

ディズニー万歳!

「お父さんも、いくちゃんママにちゅーするの?」

澄んだ目が怖い。
見上げた素直なカワイイ顔が怖い。

「あっちゃんのおうちのパパとママは、いつもちゅーしてるんだって」

あっちゃん
どこのあっちゃん?
頭が回らない。
パニクってると

「ちゅーはしないよ」って、彼は私から手を離し桜ちゃんを手招き。

そして私と彼の間に入れて
三人でぺったりくっつく。

「お父さんは桜をだっこするだろう。だからいくちゃんママにもだっこしてた」

苦しいぞ!
今までで
一番苦しい言い訳だ。

「ちゅーしないの?」

「うん。しない」
彼が桜ちゃんに言うと、桜ちゃんはちょっと残念そうな顔をした。

ごめんね。白雪姫じゃなくて。

「桜のほっぺたにちゅーしよう」
彼は桜ちゃんを抱き上げ
頬にキスして階段を上がる。

桜ちゃんは私に手を振り
彼と二階へ行ってしまった。



もう

絶対

油断しないように彼に言わなくては!