隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話

小さな小さな泣き声が徐々に大きくなり、部屋に入ると桜ちゃんはベッドに上半身を起こして泣いていた。

「桜ちゃん」
慌てて私は桜ちゃんを抱きしめた。

「どうしたの?怖い夢を見た?」
よしよしって優しい声をかけ、小さな身体を強く抱いて背中をさする。

桜ちゃんは泣きながら、私に強い力で抱きついてくる。

「大丈夫だよ。もう大丈夫。悪い夢を見たんだね。大丈夫だよ」
少しずつ嗚咽もおさまり、紀之さんもやってきて二人で桜ちゃんを見守る。

ごめんね。
私が変な事を言ったから
杏奈さんに惑わされて、心が曲がっていたから傷付けてしまった。

ごめんなさい。
ギュッと抱き直していると

「あのね……」
やっと声が聞こえた。
静かに身体を離すと、大きな目から涙を流しながら私に訴える。

「さくらはいくちゃんママが大すきだよ」

やっぱり
私の言葉がトラウマになってたか。
信じてもらえてないって泣いてたのか。

「わかってるよ。ごめんね。私が悪かった。桜ちゃんごめんね」
何度謝ればいいのだろう。
いや
もう何度でも謝るよ。

「おかあさんにソウダンしてた」
紀之さんの顔を確認して、桜ちゃんは彼に言う。

「相談?」
優しい顔で彼が言うと、桜ちゃんはうなずく。

「おかあさんに、さくらが、いくちゃんママのことがだいすきで、あんなちゃんよりすきって、うそじゃないもんって……どうしたらわかってくれるかソウダンしていた」

あ……だから
『お母さん』って呼んでたのか。
理由がわかって身体が崩れそう。

私の事が頼りなくて
私よりお母さんが大切で、恋しくて名前を呼んだと思っていた。