「言え」 乱暴だけど、その手は優しく私を抱きしめる。 「離して」 何でも知ってる幼なじみに甘えそうで怖い。 「どうして泣いてる?」 真剣な声に胸が苦しくなる。優しくしないでよ。 「離してよ」 身体を動かし、その胸から離れようとするけれど、達也の力は強く、私は逃れられない。 「言えよ」 顔を上げると 眼鏡の奥で優しい目が心配している。 達也……。 でもダメだよ。 「離して」って もう一度その胸の中動いていると 「離せ!」 紀之さんの強い声が聞こえた。