桜ちゃんは
敏感で繊細な女の子。
桜ちゃんはお母さんを求めている。
ママじゃない。
私じゃない。
フラフラと立ち上がり
夢遊病者のように部屋を出て、吹き抜けの階段を下りると、彼がコーヒーを入れていた。
「郁美さん?」
「あの……」
不思議そうな顔をする彼の前に行き
「ちょっと散歩に行ってきていい?」
自分で自分の言葉に自信がない。
ボーっとしながら私は彼に言う。
「こんな時間に?」
「すぐ戻る」
反射的に近くにあった彼のジャケットをはおり、玄関に行こうとすると
「郁美さん?」
彼に呼ばれる。
「……すぐ帰るから」
「もう遅い。どうしても行きたいのなら、僕も一緒に……」
「ひとりになりたいの」
言葉にして
やっと自分の気持ちを理解する。
そう
ひとりになりたいの私。
「早めに戻るように」
彼はあきらめて言い
私は玄関を出た。



