隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話

「杏奈ちゃんは、今日も毛皮だった?」
彼が笑って桜ちゃんに聞くと

「ううん。ちがったけどきれいだったよ」

子供は正直だ。
杏奈さんは綺麗な人。

「でもね、さくらはいくちゃんママのほうがカワイイ」

そんな事を言ってくれるけど
どうしても
私は杏奈さんの言葉に負けていた。

桜ちゃん
私に気をつかってる?大好きなお母さんが亡くなって、居場所がなくなるから、気を使ってる?

いつもなら『ありがとう』って笑って、ギューって抱きしめるのに。
それができなかった。

「あんなちゃんもすきだけど、さくらはいくちゃんママがだいすきだよ」
小さな手を広げて言ってくれた言葉。

そんな言葉に私は

「無理しなくていいよ」と……苦笑いでつい言い、テーブルの上を片付けようとしていて、ふと紀之さんの顔が目に入ると、表情が変わっていた。

顔を上げると

「うそじゃないもん!」

真っ赤な顔で大きな声を出し
桜ちゃんは二階に泣きながら走って行く。


私ったら……なんてひどい事を。

殴られたような衝撃を心に受け

青ざめた顔をして
慌てて彼と一緒に桜ちゃんを追いかけた。