小さな忍者は身体を低く落しながら
私にまっすぐやってきて
エプロンのポケットに何か入れた。
何だ?何を入れた?
そして
「さらばでござる」って
弟子のトイプーと一緒に台所から出ようとするので
「忍者さん。ちょっと待って下さい」
私は声をかけた。
ちびっこ忍者は足を止め
トイプーな弟子と同じ丸い目で私を見上げる。
「修業中の忍者さん。私はお料理修行中の者です。今、さつまいもの天ぷらを揚げたのですが味に自信がありません。味見をしてもらえますか?」
他人行儀にそう言って
さつまいもの天ぷらをひとつ桜ちゃんに渡すと
桜ちゃんはちょっと迷いながらも小さな手を出し受け取り
はふはふっと口に入れ「おいしい」って大きな声を出す。
よしよし。
この温かいのを食べさせたかったのだよ。
作戦成功。
「もうひとつ、いかがですか?」
「ありがとう。にんにん」
桜ちゃんはもうひとつ口に入れると
ドロンと弟子と一緒に、台所を出て行ってしまった。
あらら
本当に忍者みたい。
さてさて
他の具材を揚げて
天丼の準備をしなくては。



