小さい頃の想い出は
青空の下で大好きなお父さんと散歩。

お母さんはいない。
子供ながらに寂しい想いを小さな胸に封印。
少しでも箱からそれがこぼれると
大好きなお父さんが悲しい顔をするから。

大きな桜の樹がある家の前
自分と同じ名前の樹がある
大きなお家。

私は小さな指を伸ばし
『桜はここに住みたい』と……言ったらしい。
もちろん
その発言の記憶はない。

すると
大好きなお父さんは即答したらしい

『いいね』……と……。

そして引っ越し。
恐るべき行動力のお父さん。

ちょっとガンコで
ちょっと変わってる……かもしれないけど
優しくてイケメンで
色んな事を犠牲にし
愛情込めて育ててくれたお父さん。

世界で一番大好きなお父さん。

そんなお父さんと一緒になってくれた

お母さん。

ねぇ覚えてる?お母さん。

私が初めて『お母さん』って呼んだ時の事。
いつも
言おう言おうと思ってたけど
こっちが緊張して
初めて言えたのは中学三年生の夏だったね。

『お母さん。体操着どこだっけ?』
面と向かって私が言うと
誰の事?って顔になってから……泣き笑いの顔になってたっけ。

懐かしい想い出。

ほら
お母さんは
『本当の母親じゃないから、想い出が足りなくて申し訳ない』とか言ってたみたいだけど

想い出って
作ればいいんだよ。

簡単でしょ。