「桜ちゃん」
私は桜ちゃんの目線に合わせて膝をつき
優しく柔らかな髪を撫で
そのままチョコを撫でる。
「連れて行ったらチョコがかわいそうだよ。人間はいいけどチョコは飛行機に乗るのもつらいかも。乗せて北海道に行って沢山遊べるならいいけどすぐ帰って来るもの。それならおばあちゃんの家に預けて、おみやげを買ってくる方がチョコは喜ぶよ」
この説明でいいのかどうかわからないけど、私がそう言うと
「連れて行った方がかわいそう?」
小さな口が私の言葉を繰り返す
私はうなずき
「まだ小さいからかわいそう。おばあちゃんの家でお友達と遊ぶ方が楽しいと思う」
「そうなのか」
「沢山お土産買ってこよう。そして帰ってきたら、たくさん遊んであげよう」
私の言葉に何かを吹っ切ったように
桜ちゃんは笑顔で「うん」と元気に返事をした。
よかった。
さぁ準備をして
旅行に備えよう
前の日に
桜ちゃんがテンション高くなって
体調を崩しませんように
そんな願いをしていると
「郁美さん……なんか僕……お腹痛いかも」
夫が言った。
そっちかい!



