「仲間に入れてあげよう」
入れてあげないと
今夜悪い夢を見そうな気がする。
そのぐらい
悶々としたオーラを発しているから。
「郁美さんが言うならいいですよ。スイーツでも買ってきてもらいましょうか」
葵ちゃんはポケットからスマホを取り出し、門の中から相川さんにLINE送信。
相川さんは自分の携帯をチェックし
パァーッと暗雲からお日さまが現れたような顔をして、葵ちゃんに向かって満面の笑みを浮かべて親指を立て車を発進させた。
「隣町にある、軽く1時間待ちの美味しいドーナッツを頼みました。楽しみですね」
こちらも満面の笑みの葵ちゃん。
葵ちゃん
あんた……鬼や……。
相川さんが来たら
優しく迎えてあげよう。私だけでも。
近寄りがたいと思っていたイケメン人気作家は、あんなキャラなのか……可愛いじゃん。
走り去った車の後を目で追い
つい笑っていると
「何を笑ってるんです?」
紀之さんの登場に、葵ちゃんは「『郁美さんは田辺さんの事が大好き』って話をしてました」そう言って誤魔化す。
「言ってないもん」
何を言うか!
カーッと恥ずかしくなって赤くなり、それを指摘されて余計に赤くなる。
「ごゆっくり。桜ちゃんと遊んできますね」
葵ちゃんは気を利かせて行ってしまった。
もう……別にいいのに。
妙に恥ずかしくなる私。
もう出会ってから一年経つのに
こんなに恥ずかしく照れてしまうのは
きっと
紀之さんの事が大好きだから
冷やかされると心も顔も熱くなる。



