隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話


「別れる時は教えて。引っ越し手伝う」

「はいはい」

軽く返事をすると
また身体をドンとド突く。

「そこ。くっつきすぎ!」

田辺紀之から教育的指導をもらい、ふたりで笑う。

全てが和やかで
全てが優しい時間。

って……あれ?
なんか背中がゾクゾクする。

忙しかったから風邪ひいたかな。

視線を感じる。
どこ?なに?
悪い霊とか来てる?
そーゆー雰囲気を何だか門の外から感じ……相川さんっ!

門の外に高級外車があって
中にポツリと寂しそうにこちらを見る人がいた。

孤独感漂う
そこだけ
悲壮感のブラックホールのようなゾーン。

あ……通り過ぎる人が車を避けてる。

そういえば葵ちゃんに

『相川さんんも呼ぼうよ』って言うと

『ウザいからいいんです』って料理を作りながら軽く言われた。

紀之さんも『そう、いらない』と一言。

へタレはへタレに冷たい事を知る。


でも
あのブラックホールを何とかしないと
通行人の迷惑になるよ。

「葵ちゃん。相川さんが来てるよ」

葵ちゃんに対する大量の着信を無視されて来たのね。可愛いじゃない。

「えーっ?そうなんですかぁ?」
葵ちゃんはノンアルコールカクテルを手にして門の外を見る。

すると
相川さんはチョコと遊ぶ桜ちゃんのような顔で、ニコニコ笑顔で手を大きく振った。
葵ちゃんが大好きなんだね。

「郁美さん。ストーカー法って……どんなんでしたっけ?」

家政婦
雇い主をストーカー扱いする。