「ごめん」

トイレから出て
心配そうな顔をする紀之さんに、まず謝る。

「ごめん。忘れて。お騒がせしました!」

真剣に話し合って
感動した後の誤解

超……気まずい。

「いやー生理きました。遅れていただけだった。ごめんなさい」

わざと明るく大きな声を出し
感動を笑いに変えようとするけれど



あぁ

人が落胆するって

こんな感じなのか。


リアルに人間が
目の前でガッカリする様子を見て思う。



「いや。いいんですよ。郁美さんも早とちりだなぁ。ははは」

見事な棒読み。

「無事解決ですね」
遠い目をして夫は言う。

「桜……まだ帰らないかなぁ……」

長身の身体をクルリとリビングに向け
ふらつきながら彼は歩く……あ、コケた……あ……膝から崩れた……。


ごめんね。ぬか喜びってヤツだったね。
私の早とちりだった。ごめん。
桜ちゃんに報告しなくてよかった。

でも

嬉しかった。

桜ちゃんとふたりで
私を守ってくれるって言ってくれて

嬉しかったよ

ありがとう。

私は幸せです。