「いや……まだ……」

「名前は何てつけましょう?上が桜だから……椿?梅?バラ?蘭?」

梅?
どんなチョイスしてる?

「隣の実家には言いました?桜……桜にいつ言いましょう。やっぱり僕から?」

「それはもう少し待って」

「わかった。ふたりで言おう」

「その前に、あの……まず一緒に確認してほしいの」

気持ちは最高に嬉しいけど
突っ走りすぎだ田辺紀之。
横浜ランドマークタワーの下りエレベーターより速度が速い。

待てのポーズをして
ガサゴソと妊娠検査薬を取り出し
彼と私の間に置く。

「ひとりじゃ不安で」

なんだかんだで
チキンです私。

「いいですよ。手伝います」

トイレはひとりで大丈夫。

真面目に堂々と手伝おうとする彼を制止し、ふたりで下に降りようと階段に向かう。


「色々な意味で自信はないの」

溜め息と共に
素直に口から出てしまう。

「前に言ったとーり自信はない。桜ちゃんの新米ママとして、いっぱいいっぱいで、新しい命を授かっても親になる自信はない。桜ちゃんと自分の子を差別したらどうしよう。平等に扱えなかったらどうしよう。桜ちゃんに寂しい想いをさせたらどうしようって考える」

怖いの
それがとっても怖い。