「別れ話ではありません」
真正面で彼の目を見てそう言うと
夫はヘナヘナとその場で崩れた。
危機感持ちすぎじゃ!
どんだけ自分に自信ないんだコイツ。
まぁ
私も人の事は言えないけど。
「くるべきモノが来ないんです」
真面目に言うと
「新聞の集金ですか?」
ムクっと起き上がり真面目に答える。
ダメだ
ストレートに言わないと伝わらないわ。
「生理が来ないんです」
はっきり言うと返事はない。
そして表情もない。
あれ?もしかして反対だった?
マジで三人でこのまま暮らそうと思ってた?
「紀之さん?」
「妊娠した?」
ふたりの言葉が重なり
私は痛いくらいに自分の肩を彼の両手で押さえられた。
「郁美さん、子供がデキた?」
怖い
目が怖いんですけど紀之さん。
「いや、まだはっきりわからないけど……ただ、ちょっと遅れて……」
「ありがとう!」
グイッと身体を引っ張られ
強く抱かれる私。
「郁美さんありがとう。本当にありがとう」
「紀之さん」
「……ありがとう」
愛情深い言葉に胸がじんわり。
「あ、ごめん痛い?苦しい?つわりは重い?病院行く?いつ産まれるの?どっち?」
目をランランと輝かせ
さっきまでの悲壮感はどこへ行ったのだろうか。



