「ですよね……郁美さんもつらいですよね」
人の意見も聞かず
田辺紀之は勝手に話を進めていた。
「いきなり子持ちだし。亡くなった妻の存在は消えませんよね」
いや……違うんですけど。
「僕は何度も言うけど、亡くなった彼女の事は忘れない。いつまでも大切な存在です。そして娘の桜は僕の全てです。こんな図々しい事は言いたくないけど、郁美さんも僕にとって大切な存在です。心から愛しく思っていて……」
「あの……」
「他の誰にも渡したくない。そのくらい好きなんです」
「じゃなくて」
その悲壮感溢れる顔を止めてー。
「別れ話をする前に、もう一度考え直そう」
「話を聞いて欲しいんですけど……」
「とことん話を」
胃のムカムカが
心のイライラに進化する。
ポケモンゲットだぜ!……古いか
「話を聞けや!」
私は大きな声を張り上げ
手元にあった枕を振り上げ
紀之さんの頭にヒットさせた。
「暴力反対」
「話を聞いてちょうだい」
そして
またベッドの上で正座から始めよう。



