気持ちも身体も寝室のベッドで沈んでいると、ドアが開いて紀之さんがやってきた。
彼は何も言わず
私の隣にゴロリと横になり
そっと優しく
私の身体を後ろから抱きしめる。
あったかい。
自分が桜ちゃんみたいに
小さな子供になった気持ち。
彼に包まれると
安心してしまうから。
「大丈夫?」
そう聞かれてうなずく私。
彼は私の耳を甘く噛み
私は目を閉じ
心地よい甘い痺れを感じてしまう。
「郁美さんが好きだよ」
私の夫の声は甘く優しい。
「大切な人だから、これから幸せにしたい人だから、無理はさせたくない」
「無理してないよ」
「このまま三人で暮らそう」
ん?
「このままでいい」
変な展開になってきたな。
いや
いっそここで話をしようか
「紀之さんあのね」
私は起き上がりベッドの上で正座する。
「何でしょう?」
彼もつられて正面で正座する。
変な体制。それはいいとして……えーっと、えっと。
「大切な話があるんです」
思いつめた顔で紀之さんにそう言うと
彼は
とっても苦しそうな
つらそうな切なそうな
半分泣きそうな顔をこらえながら私の目を見て
「……そうですか」って声を絞り出す。
いや!
まだ何も言ってないんですけどっ!!



