「郁美さんにもあるよ」

彼はコマさんをソファに置き
自分のポケットから金色のチェーンを取り出した。

「手を出して」

そう言われ
そっと手を伸ばすと

わぁ綺麗
なんて可愛らしいブレスレット
桜の花だ。

ゴールドの細いチェーンに
可憐な桜の花が咲いている。

ほんのり桜色した貝の花びらが五枚
柔らかく重なる花びらの中央に
ピンクトルマリンとルビーが飾られている。

可愛い桜。

「ホワイトデー」

「ありがとう。とっても可愛らしい。ありがとう大切にします」

ってお礼を言うと
ギュッときつく抱かれた。

「あの時会場で、桜を追って僕の目の前から消えた時」

「うん」

「もう頭がパニックで……どうしていいか、わからなくなった」

「……ごめんね」

私も突っ走るタイプだからなぁ反省。

「僕の手を離さないように」

柔らかい唇がそっと近づく。


はい。

絶対離しません。


優しいキスに誓います。



     【完】