「始めましょうか」って彼のお父様が声を出す。
あぁ彼の声に似てる。
お父さんがこちらの列を紹介した後
あちらのご両親もそれにならう。
やっぱり
綺麗な女性二人はお嫁さんのお姉さん。
似たような年齢かな
目の前のお姉さんと目が合い、にこりと微笑むと……無視された。
いいけどさ。
食事は最高に美味しいのだけれど
喉に通らないのが残念。
フランスだヨーロッパだ
留学だ大学院だ
古城がどーした
オーケストラがどうした
真冬にサンタ呼んでサーフィン
スキーで山越えて国境超えた話
会話に加わらず
ただ笑顔を見せるだけの私。
イオンでバーゲンの話は通じないだろう。
「ドイツ文学に精通されて、翻訳家のお仕事とか」
あちらのお父様が紀之さんに話を振る
「ひとり自由で困りますよ」
こっちのお父さんが笑ってる。
はい。自由人です彼は。
「素晴らしいですわ。奥様もそのお仕事を?」
さっき私を無視した女性が、挑戦的に私に聞くので
「いいえ。私はドイツ語はできません」素直に言ったら、嫌な感じで笑い
「では他の語学を?」って聞かれたので
「いえ日本語オンリーです」って笑いを求めて言ったけど……失笑された。
これが失速ってヤツか?
あれ
間違えた私?
雰囲気を和やかにしたいだけなのに。



