隣に座っていいですか?これはまた小さな別のお話



その三日後

朝から何か悩んでいる彼。

ちょっと困った感じで唇をとがらし
食後に遠くを見たりして

心配しながら
桜ちゃんを学校へ行かせ
私も隣の実家に午前中パートに行き

戻ってきたら

本を片手にしながら
読んでる様子もなく
窓の外をぼんやり眺める姿。

「ただいまー」
わざと大きい声を出すと

「おかえりなさい。お疲れさま」って
いつもの笑顔だけど、ちょっと精彩に欠ける。

「紀之さん?」
私は素早く彼の元に行き、額に手を当て発熱チェック。

熱はない。

「どうしました?」
驚く彼の横に座り、手を握る。

「そっちこそどうしたの?」って言ったら、苦笑いして顔を横にする。

「こっち向いて」
ギュッと顔をつかんだら「郁美さん痛い」と情けない声。
うん。間違っても俺様ではないな。

「何があったの?」
鋭く聞くと
やっと教えてくれたのが

「弟が結婚するんですよ」の、一言。

「そうなの?いつ?」
紀之さんの弟さん?
申し訳ないけど……会ったことがないという。

彼は三兄弟の真ん中。
一番上のお兄さんは結婚して子供もいるらしい。
実家の跡取りやってセレブ生活。

でも彼は家族が嫌いで
自分の挙式にも彼の家族は来てないという恐ろしい話。