「いくちゃんが、ずっとこのおうちにいる?お父さんといっしょにすむの?」

彼は桜ちゃんに言われて
黙ってうなずいた。

「だから桜は心配しなくていいのよ。ママと行きましょう。桜がいると……」
彼女が私達に追い打ちをかける瞬間。



「じゃぁさくらも、ここにいる」

ニコニコ笑顔で桜ちゃんはそう言った。

え?
大人三人 言葉を飲み込む。

「桜はお母さんもスキだけど、お父さんが大大大大スキなんだ。だからお母さんといっしょもいいけど、お父さんがいい」

桜ちゃん。

「いくちゃんもこのおうちにくるし、さくらはお父さんといくちゃんといっしょがいい」

桜ちゃんは彼女を見上げてハッキリ言う。

「お父さんといくちゃんとさくらがいい。ごめんねお母さん。さくらはお父さんがスキなの。いくちゃんもスキなの」

申し訳なさそうに桜ちゃんが言うと、彼女は桜ちゃんに駆け寄り身体を掴む。

「桜!ママ言う事がきけないの?ママといらっしゃい!」

「いや!お父さんがいいの」

乱暴に引っ張ろうとする彼女を、田辺さんは手荒く桜ちゃんから離し

「帰ってほしい」

冷たく言い
彼女の背中を押して玄関まで追い込む。

私は意外な展開にヘナヘナと崩れてしまう

「いくちゃん?どうしたの?」

何が起きたかわからないって感じで桜ちゃんが聞くので、私は「ん?えっと……うん」ってワケのわからない返事をしてしまう。