嫌な予感というのは
どうしてこう当たるのだろう。

「桜は起きてた?ママよ」

髪をまとめ
長めのジャケットを着た彼女がやってきた。

こんな時間に来る予定だったの?
聞いてないけど。

「さぁ出かけましょう。ママとおでかけよお支度して。ディズニーランドに行きましょう」

私には目もくれず
紀之さんに「日曜日に帰るから」そう言ってから、ふと我に返って言葉を継ぎ足す。

「戻すの面倒だから、そのまま私がもらっていい?二度と会わせる気はないけど」

勝ち誇った顔が憎らしい。

「桜は物じゃないだろう」
彼の怒り顔と同時に

「みっきーにあいにいく?」
桜ちゃんのワクワク声。

「そうよ。桜が望むなら海外のディズニーランドに行きましょう」

「わーい」

両手を上げて大喜び。

桜ちゃん

お母さんとディズニーランドって最高なんだろうね。

嫌な気分になってると

「お父さんも行く?いくちゃんも行こう」
可愛い丸い目が私と彼を見ていた。

「桜だけ。桜とママとママのお友達」

お友達
例の再婚相手?

「そんな話は聞いてない」

焦る彼の顔が切羽詰まっている。

桜ちゃんは言い争う田辺さんと自分の母親の顔を、交互に見て驚いていた。

「ここで話をつけましょう」
彼女は高い声を出し

桜ちゃんの身体を抱きしめ
優しい声を出す。

「桜はママが好き?」

すると桜ちゃんは「うん」って大きく返事する。

彼は苦い顔で目線を遠くにやり
身体を強張らせる。


私達の負け?

桜ちゃんには母親が必要。

心の奥で
ずっと待っていたのだろう。