十二月に入り、クリスマス商戦や年末商戦に向けて本格的に忙しくなってきた頃。
俺は急遽、平泉のオヤジによって会議室に呼び出されていた。
「なんですか」
「…まぁ座れ」
こんな物々しい雰囲気の平泉のオヤジは、今まで見たことがない。
真面目な顔をしているのが、気持ち悪く感じるほどだった。
なんなんだ。…なにか問題でもあったのか?
「例のストーカーの件は、どうなってる」
「…ああ…。メールも来なくなりましたし…。待ち伏せもされていないと思います」
最後に会ったあの日から、奈良橋の姿は見かけていない。
大体仕事が忙しすぎて、最近は気にする暇もなかった。
「実は…先月お前がヘルプに行っていた新店の女の子が、退職したいと言ってきてな」
「…え…」
「店長が詳しく事情を聞いたんだが、どうやら君の彼女だと名乗る女の子が何度も店に押しかけて、何日もその女の子を罵倒し続けたらしいんだ。ずっと一人で我慢していたらしいんだが、どうやら心に傷を負ってしまい、今は出勤を拒否しているらしい」
「……!」
「心当たりはあるか?」
平泉のオヤジの話を聞いて、俺はただ呆然とした。
間違いなく奈良橋の仕業だ。
まさか闇雲に、俺と関わった子をターゲットにするなんて…。
知り合いだからなんて考えは、はっきり言って甘かった。
今まで燻っていた怒りは、もう爆発寸前だった。
