一人分のルームサービスを頼んでベッドサイドに置き、それからシャワーを浴びて、手早く身支度を整える。
部屋を出る時躊躇したが、俺はもうエリカの顔を見ることが出来なかった。
フロントで二日分の宿泊費を支払い、ホテルのパーキングに停めてあった車のもとへ足早に向かっていく。
吐き出した白い息が夜の闇に溶けていくのを見つめながら、俺はエリカを初めて抱いた日のことを思い出す。
付き合い始めて二度目の冬が、もうすぐ訪れようとしていた。
クリスマスや年末商戦に向けて、これから一年で一番忙しい時期がやってくる。
しばらくエリカと距離を取ろうと決めたのは、その時だった。
懲りずに呼び出して会えば、俺はまた同じことを繰り返してしまう。
好きな女の本当の感触を知ってしまったんだ。
このままずるずるとあの行為を繰り返せば、エリカは本当に俺の子供を身ごもるかもしれない。
でも蓋を返せば、それはただの蛮行に過ぎない。
仕事の忙しさで余計なことを考える暇がないせいか、俺は自分の欲求になんとか歯止めをかけることが出来ていた。
