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エリカと一緒に朝を迎えるのは初めてだったのに、それは想像したよりも随分苦い時間だった。
一晩中手酷く扱いながら抱き続けた挙句、超えてはいけない禁忌を何度も犯した。
一度知ってしまった甘い蜜の味は衝撃的で、せっかくの休みも己の欲求を満たすことで潰れてしまった。
ついには起きなくなってしまったエリカの規則正しい寝息を確認して、ほっと安堵に暮れる。
無理をさせてしまった罪悪感は、全てが終わったあとになって、さざなみのように俺へ押し寄せていた。
「…しょう、た…」
うわ言で名前を呼ばれて、ベッドのふちに座り込んで煙草を吸っていた俺は、咄嗟に後ろを振り返る。
先程まで安らかだった寝顔が、苦しそうに歪んでいるのが見て取れた。
どうやら俺は、夢の中でまでエリカのことを苦しませているらしい。
(…嫌われたな…)
自業自得だってことは、自分が一番分かっている。
後悔はしていない。
子供が出来ていれば、もちろん責任を取るつもりでやった。
…でももう、エリカの心は一生手に入らない。
エリカに愛される権利を失ってしまった虚しさに、俺は押し潰されそうになっていた。
