妖精と彼







ガラガラとガラス戸を閉め、ベランダ伝いにお隣の自分の家へと帰っていったトウくん。



呆然とする俺と、状況が理解できていない姉さんが部屋には取り残された。





「ねぇ愛…結局、トウは何の話をしてたの…?」



「…………」





状況が全く分からなかった姉さんは、俺に説明を求めた。



…だけど、桜の花びらを見たのも、桜の妖精に出会ったのも俺だけだ。
きっと、言っても理解できないだろう……。





「俺も、よく分かんなかった…」





そう思って、俺は姉さんに説明しなかった。





姉さんは、俺のその言葉で「トウくんが一人でわめいていただけ」と判断したらしく、そこで納得したらしい。


……これはトウくんの日頃の行いの結果であって、俺は絶対に悪くない。





本当は、あまり伝わらないとしても…姉さんに話してみれば良かっただろうか…と少し考えたけれど、深く考えることはやめた。