妖精と彼










そういえば、まだ要件聞いてなかった。






「あの…俺に何か用があったんですか…?」





そう聞かれた女の子は、キョトンとした顔をして…思い出したように頷いた。





『えぇ、まぁ…。でも、またこんどでだいじょうぶです。くらもと あいさん。』





ひどく驚いた。
俺はまだ、名乗っていないのに…





「なんで…俺の名前…」






女の子は、ニコリと笑った。
その笑顔を例えることは難しいけれど…花のようだと思った。






『わたしは、さくら…といいます。おぼえてもらえると、うれしいです。』





「さくら……?」





復唱すると、"さくら"は嬉しそうに微笑んだ。





『また、あいましょう…』







そう言うと、さくらはスッと姿を消した。


目の前で姿が消えても、俺は特に驚きはしなかった。
それ以上の驚きがあった。





「一体…何者なんだ……?」





幽霊?
妖精?
…でも、自身を妖精だと言い張るトウくんと気配が違う…。




…ってことは、幽霊か…?
……でも………







色々と気になる気持ちはあったものの、銭湯の清掃のことを思い出し…俺は急いで帰路へついた。