妖精と彼








「…そうだけど?」







そう答えると、女の子はホッとしたように微笑んだ。
その美しさに、俺は無意識に息を飲んだ。



それは、何かに例えるのが難しいほど美しかった。





女の子は、微笑んだままコクコクと頷いた。







『…そうですよね。よかったです。』




「"よかった"…?」




『わたしのことに、きづいてくれて。』







嬉しそうに美しい微笑みを保つ女の子を、俺はポカン…と見つめる。

何が言いたいのか、全く分からない……








しかし、残念ながら俺はそれどころじゃなかった。
ふと左手を見ると、腕時計が目に入る。





それは、俺をハッとさせた。






……ヤバい。
今すぐ帰らないと、銭湯の開店に清掃が間に合わない。







「あ…すいません、俺、そろそろこれで。」



『あ……。よびとめて、すみません…。』








女の子は、悪いと感じたのかシュンとした。
その様子を見ていて、俺に用があって話しかけたんじゃないのかと、ふと思った。