私は信じられなかった。
この屋敷は、父親の護衛をするキュアスリー(何でも屋という、貴族からは道具のように扱われる嫌われもの)によって、たくさんの魔法を施され守られている筈なのだ。
炎くらいでこんなにも燃え上がる筈はなく、あり得るとしたら護衛達の魔法よりも強力な魔法による炎―――…。
―――炎?
私はさっきの老人の事を思い出す。
屋敷の炎を消そうとする人、逃げ惑う人、野次馬にくる人が集まりだして騒がしくなってきたが私は構わず目を見開く。
なぜあの老人はメイドの姿をした私の正体がわかった?
なぜ私が炎の魔法を使えるとわかった?
答えは一つ。
私を見ていたから。
私を見張る方法なんて、この守られた屋敷の中ではこの守護魔法を破る強力な魔法さえ使えればできない事もなく、そして私はスカーレット家の一人娘という肩書きがあり、命を狙われるという事も多々あった。
という事は、『私を見ていたから』、その答えから導きだされるのは―――、
『お前の命を狙っているから』
私はその声と共に屋敷の外れへと強風により思いっきり吹き飛ばされた。
