空気を震わせ、すべてを通い、私の耳に届く。
その道が見えると、私はなんなんだろう、とか思うけれど、
ただ音が聞こえて、空気を震わせて、私を励ますその音が、
愛おしくて、愛おしくて。
そして、大切にしたい、と思ったんだ。



-第三話 空気の奏者-




「で、どういうことか説明してくれる?」



「い、今話したとおりでございますリヴィアス様・・・」

リヴィアスが椅子に座って足を組む前で、セルリアは床に正座をして頭を下げ続けている。
毎日毎日見慣れた光景なのか、横目で見ながら二人がやり終わった依頼の処理を紅茶色の髪をもつ少女-さくらは我関さず、と言った具合に黙々と続けていた。

「な・ん・で!
人手が足りない食堂のお手伝いくらいちゃんとできない!
なんだよ割った皿の数13枚って!!」

「しょうがないじゃん!転んだんだもん!」

「転んだだけでこんな割れるかあほおおおおおおおお」

「ちょ、ちょ、手に魔力ためないで!
火熱いからやめて!」

何やら派手に壊したような音がしたが、さくらはいつもの事、と呟きながら見向きもしなかった。
リヴィアスと違い少々落ち着きがないセルリアは依頼を失敗する率も多く、ほぼ毎日こうやってリヴィアスにお叱りを受けている。
さくら自体も叱ったりするのだが、あまり効果は得られずすべてをリヴィアスに任せてある。
そうやっても、落ち着きがないのが変わるわけではないのだが。

「とめなくていいの?」

きら震えてるけど、と蓮華はさくらの傍にお茶が入ったコップを置くとお盆を抱きしめるように持つ。
蓮華も慣れてるのか二人が暴れてるのを落ち着いてみてるが、ふと部屋の端を見ると最近セルリアは依頼先から拾ってきた少女-きらが怯えてるように丸まっていた。