ORANGE SNOW



「な…っ」

よくよくその人形を見ると、虚ろな瞳をした生きた少女だった。
虚ろ、というより泣きそうな瞳なのだが少女はセルリアを見つめ続けていた。
少女の白いドレスから伸びる足には鎖がつけられており、明らかな『異常』を表していた。

「あなた、だれ?」

少女はっきりとした口調で、その床まで伸びた黒髪を揺らしながらセルリアに口を開いた。
少女が抱き締めている不思議の国のアリスを思わすうさぎが白いはずの少女にゴシックを強調させており、セルリアは少しひるんだがすぐに膝を床についた。

「プリムロウズというキュアスリーのセルリア、と言います。
貴女を今日1日護衛させてもらいます」

その言葉に少女は首をかしげると、鎖を引きずりながらセルリアに近づいた。
セルリアの視界に少女の素足が入り、思わず息をのんだ。

彼女の足は、痣だらけだった。

急いで顔を上げ、少女の手を掴み見、最後に顔を見た。
少女は泣きそうな瞳を依然として向けていた。

「どういう事よ…」

少女の手も足同様痣だらけで、顔もまた赤く腫れていた。
間違いない異常にセルリアは顔を歪ませた。