「なっ、なんで…急に…?! 」

「いや…べつに…?」

「はい、じゃ、授業はじめるぞー
教科書82ページひらけー」

「あー、センセー、オレ教科書忘れちったーww」

「またかよーwwゆうとーww」
「何回忘れれば気が済むんだよww」

いつもこうやってみんなを和ませてくれる。
クラスの中心人物です。

「だってさーぁ、ガリ勉…じゃなくって
ま・ひ・ろに見してもらいたかったんだよぉー」

「え?!」

教室中がざわめき出した。

「あー、もう!長谷川黙れ!
お前が喋ると授業が進まん!」

「はーいwwすんませーんww」

そのひと騒動があり、普通の授業に戻った。

『キーンコーンカーンコーン』

あー、終わっちゃった…。
私にとって1番嫌いな時間が始まる…。
そう、休み時間だ…。

奈緒さんのノロケを聞くのだって
いい加減あきてきてしまった。

そう思っていたその時。

「ガッ…涼宮さん…?」

「はい。なんでしょうか?」

「あのーさぁ、その…優人と付き合ってるの?」

「えっ?!そんなわけないじゃないですかっ!!!」

「だ、だよねーあははっ、ごめんごめん」

誤解が解けたみたいでよかった…。

安心したのも、つかの間。

「えー。なんかさ、まひろ冷たくなーい??」

「は…?!」

私の耳に顔を近づけてきて…。

「二人の時はあんなに……だったのに♡」

「なっ!!!何言ってるんですか?!」

「や、やっぱり、なんかあったんでしょ?!」

周りの女子たちは長谷川くんの一言でまた
キャーキャー騒ぎ出した。

長谷川くんにも、周りの女子たちにも
イライラしていた私はつい、

「あー!もう!少しは静かにできないんですか?!
高2ともなる人達がこんなことくらいで
キャーキャー言わないでくださいよ!」

と…まるっきり説教みたいなのをしてしまった…。

あー。やばい。これは女子たちの反感を
買っちゃいそう。いじめがはじまるのかなー。

なーんてぼんやり考えていたら
急に長谷川くんが後ろから抱きしめてきた。

「なっ?!何するんですかっ!!!
長谷川くん?!離してください!
くるしっ、し、死んじゃいますよー!!!」

と、言ったら長谷川くんは抱きしめる強さを
弱くして

「まひろ…ごめんな、
あんな…失礼なこと…しちまって…」

「そ、そんなっ!!!長谷川くんが謝ることじゃっ…」

「ごめん…涼宮さん。ちょっとやりすぎた。」

そ、そんな真っ直ぐに謝られても…。
予想外の、展開に私は驚いてしまった。

「も、もういいですよ。」

と、言ってにっこりと笑顔を作って見せると

「涼宮さぁんー♡ありがとね♡」

と、媚びを売るような猫撫で声で女子たちは
言ってきた。

「まひろ、ホントに許してくれるのか?」

心配そうに見つめてくる長谷川くん。

こころなしかかっこよく見えてしまった。

「え、はい。許してるじゃないですか。」

と、また作った笑顔を見せる。

私は内心、これで騙されてくれるんじゃないか。
なんてことを考えてしまっていた。

「………なんでさ…作った笑顔なの…?」

え……。なんでバレて…。

「俺にはさそんなことしなくていいんだよ…
なんでホントのまひろ見せてくんねぇーんだよ
そんなに俺の事信じらんねーのかよ…」

悲しそうで今にも泣き出してしまいそうな
顔をして見つめてくる長谷川くん。

「長谷川くん…?泣きそうですね…」

「!!!!!!!!!!」

泣きそうだったのに 次はすごくびっくりした顔をして教室を急いで出ていってしまった。

「どうしたんでしょうか…。長谷川くん…。」

「あんたさぁ、馬鹿なの?」

「え…私が…馬鹿……?」

「人の気持ちも考えらんないのね…
学力のほーはいーかもしんないけど
人の気持ちがわかんなかったら頭いい
なーんて言わないんだからねッ!!! 」

「は…?」

何言ってるんだ…あいつらは…
と、考えながら私は帰り道を歩いた。