……もう帰ろう。



そう思って、私は図書室の鍵を職員室に返すと、昇降口まで向かった。



すると。




「未歩?」



「え……彼方?」



既に部活を終えたはずの彼方が、昇降口で靴を履き替えていた。



「あれ、未歩は用あるから先に帰ったんじゃなかったの?航からそう聞いたけど。
ふたりなら、もう帰ったよ?」



「あー、用っていうのは嘘。航が、沙奈とふたりで帰りたいって言ってたから……。暇だったし、図書室で本読んでた」



すると彼方は、驚いたように目を見開く。



「そうなの?」



「うん」



私は力なく笑って、うなずいた。