すると、彼方の表情が曇る。



「書けない……か……」



……?



どうして彼方がそんな表情をするのか、よくわからない。



「無理して書くものでもないけどね。……書けないのは、続きが思い浮かばないから?」



「いや……続きはできてるんだけど、来週まではたぶん、書かないと思う」



「来週?……なんで?」



「そ、それは……」



航が死んじゃうかも……とか、言えない。



ていうか、彼方も私の小説ごときに首をつっこみすぎじゃない?




「とりあえず、あんな趣味で書いてるような小説、どうだっていいじゃん。よーし、私は帰るね!」



「あっ、未歩」



「またね、彼方っ!」




私は半ば強引に話題をそらし、走って彼方を横を通り過ぎる。



そしてそのまま手を振ると、廊下を突っ切って昇降口まで向かった。