「上原さんは、どれにしますか?」
見惚れるように、ずっと沢上さんのことを見つめていたことに気づき、ハッとする。
「あ、じゃあ、私も同じものを……!」
「了解です」
そして沢上さんは、優雅な流れで手を挙げ、店員さんを呼ぶ。
って、これも私の仕事なのに……!
「ごめんなさい。何から何まで……」
「いえ、全然。なにせ、あの上原未歩さんとお会いできただけで、光栄なんで」
「……え?」
「新人小説大賞で、かつて大賞を受賞されてた上原未歩さんですよね」
一切の迷いもなしに、確信を持ってそう言い切る沢上さん。
……どうして、それを知ってるの?
「あなたの大ファンなんです。ずっと、あなたの作品が俺の元に届くのを待ってました」
心臓が、ドクンと音を立てる。
欠けていた記憶が、ひとつひとつ、ピースを埋めていくように、私の中でひとつのパズルを形成していく。
私は……。
私は、ある人に私の想いを伝えるために、あの物語を書き続けた。


